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CTI SUPREME COLLECTION

イラスト:AHAU

1970年代に新たな潮流<クロスオーバー/フュージョン>路線を切り開き、ジャズのポピュラー化に多大な貢献を果たしたレーベルCTI。創設者クリード・テイラーの名前を冠したCTIと、その姉妹レーベルのKUDUに残された数々の名作から、約40年を経た今の時代まで聴きつがれるべき40タイトルを厳選。最新リマスタリングを施したブルースペックCDで贈るCTI究極のセレクションは、時間を超えた、まさに歴史的マスターピースとなる。

CTI Supreme Collection

シリーズ監修:小川 充

ジャズ・レーベルの名門インパルスの創立者、そしてヴァーヴの名プロデューサーとして知られるクリード・テイラーが、自身のイニシャルから名付けたCTI。1967年にA&Mの傘下で始まったこのレーベルは、1970年には独立し、1972年にサルヴェイション、1974年にKUDUという姉妹レーベルをそれぞれ立ち上げ、1970年代を席巻したクロスオーバーと呼ばれるジャズの新しい潮流を切り開いていった。ブルーノート、プレスティッジ、リバーサイドなど、1950 年代から1960 年代のジャズ黄金期を築いた専門レーベルが、ハード・バップ、モードなどいわゆるモダン・ジャズを主流とし、ジャズ・ファンのための作品制作をコンセプトとしていたのに対し、CTIはジャズ・マニアではない一般的なリスナーも対象とし、そうした人にいかにジャズを届けるかということをテーマとした。1960年代のジャズ界ではフリー・ジャズの旋風も巻き起こり、音楽が一種の概念として抽象化を極めていった時代でもある。それがひと段落した1970 年代、音楽界も反動からポピュラー化が加速する。CTIはそうした時代を代表するレーベルだった。「ジャズの大衆化」とおおまかに言われるこうしたレーベル姿勢は、ジャズ以外のポピュラー・ミュージック、当時で言うならばロック、ソウル、ファンクなどの要素を融合することにより、間口を広げていくことへと繋がる。こうした融合的な音楽が、すなわちクロスオーバーとしてメディアを賑わせるようになり、後のフュージョンへと繋がっていくのである。

ただし、CTIは大衆化イコール商業化と捉えていたわけではない。確かに流通網の整備、音楽以外のパッケージ的な部分の向上、広告戦略やマス・メディアへの対応など、より多くのリスナーに作品を届ける努力を行った。それは企業として当然の行為である。しかしながら、中身の音楽性そのものが大量生産可能な安っぽいものとなってしまうことは、本末志向したジャズのポピュラー化ではない。CTIは作品の質を落とすことはなく、逆にオーケストラを使うこともあれば、ひとつのアルバムに多くのミュージシャンを起用し、スタジオ代や録音費用を惜しまないなど、より潤沢な予算を用意した。録音技師には昔から交流の深いルディ・ヴァン・ゲルダーを起用した。当時、音楽業界全体が商業化の流れの中にあったわけだが、CTIは音楽産業のステップ・アップに積極的に関与しつつも、その一方で徹底した品質管理を行い、レーベル・アイデンティティを守っていった。単にジャズとポピュラー音楽との融合だけでなく、CTIにはクラシックをジャズで演奏した作品が多いのは、イージー・リスニングとしてのジャズという見方がある一方で、質や志の高い音楽としての在り方からのアプローチであったとも考えられる。

CTIの特徴として、プロデューサー、アレンジャー、コンポーザー、コンダクターといった、それ以前のジャズの世界では裏方的な存在の音楽家が、時に主役であるプレイヤーやシンガー以上にスポットを浴びるようになった点が上げられる。ボブ・ジェームス、ドン・セベスキー、デオダート、デヴィッド・マシューズなどがその代表で、彼らの活躍によってCTIの作品は、単に一人のミュージシャンのプレイに依存しないトータル・サウンドとして評価されるようになっていった。1970年代以降、音楽界はプロデューサーの役割が重要視されていくわけだが、CTIもそこに多大な貢献を果たしたのである。制作面、経済面などを鑑み、1970年代は音楽産業において重要な転換期にあったが、そこで現在の音楽レーベルに繋がる在り方を、CTIは指し示していたと言える。「CTI Supreme Collection」と題された本シリーズは、CTI及びその姉妹レーベルに残された作品から、現在も聴きつがれるべき40タイトルを厳選し、最新リマスタリングを施したブルースペックCDにて提供する企画である。CTIの徹底した品質管理、強固なレーベル・アイデンティティがなければ、その作品は現在も残ることはなかったはずだ。そして、ここに残ったものこそ、今後も時代を超えて聴かれるマスターピースなのである。作品そのものの質の高さは当然のこと、CTIのレーベルとしての志、トータルなCTIの魅力が伝わるシリーズであって欲しいと願う次第である。